今回は、「妊活に対して、夫が協力的でないことにイライラする」というお悩みについて考えていきます。
お悩み:妊活に夫が協力してくれない
結婚して5年、ずっと赤ちゃんが欲しいと思っているのですが、なかなか授かりません。
不妊治療を始めたいと伝えましたが、彼はもう少し待ってもいいんじゃないかと消極的な姿勢でいます。
なんとか説得して検査だけは受けたのですが、幸い私は異常なしで、夫のほうに少々問題が見つかったんです。
精子の数が妊娠しやすい標準値に届いていないということでした。自然妊娠が絶対に無理というわけではないらしいですが、ベストではないと。
体質改善を進められましたが、彼は煙草も飲酒もやめないし、渡したサプリも飲んでくれない。
タイミングを取りたいのに、その日に限って毎回帰宅が遅い。
まったく協力してくれないし、二人の問題なのに他人事のような態度が許せなくなります。
(37歳女性)
妊活を始めてすれ違うカップルは多い
妊活中の女性から、「パートナーが協力してくれない」「私ばっかり頑張っているようで寂しい」「夫に当事者意識がないことが不満」というお悩みが寄せられることがあります。
気が合って結婚した二人なのに、妊活を始めてからすれ違うようになったというケース、少なくないんですね。
まず、妊娠に対しての向き合い方が男女で差が生まれやすいのです。
女性は、妊娠にはタイムリミットがあることをリアリティを持って感じています。
年齢が進めば進むほど妊娠しにくくなり、出産にリスクが生じやすいと聞けば、自分も1日でも早く授かりたいと思うでしょう。
なのに、なかなかうまくいかない。
生理が来るたびに焦燥感や落ち込みを感じやすく、心と身体のバランスを保つだけでも一苦労です。
一方、男性は妊娠リミットを理論的には理解していても、実感として女性と同じように感じている人は少ないのではないでしょうか。
妊活や不妊治療について知識が少ない男性が多く、その知識量の差も無関心さや消極的な態度を生み出してしまいます。
また、女性は「共感してもらいたい」生き物ですが、男性は「解決したい」生き物。
妻は自分が悩みや苦しんでいる思いを共有したいだけなのに、夫側が解決することを目指していると、ただ話を聴く、とか気持ちを分かち合う、という視点が抜けてしまいがち。
「妊娠できずに苦しい」というテーマはすぐに解決してあげることができないので、夫としても、戸惑いや無力感を感じてしまうのかもしれません。
二人の問題として共有できている、と思えれば妻の方も安心できるのですが、何かを相談してもちゃんと取り合ってもらえなかったり、上の空だったりすると、自分だけが苦しんでいると思いがち。
そのようなやりとりが続いていくと、気持ちが閉じてしまい、妊活というデリケートなテーマということもあって、正直な気持ちや思いを相手に伝えていくことを諦めてしまう場合もあるでしょう。
でも、すれ違いをそのままにしても、ストレスが高まるだけで何も良いことはありません。
男と女として生理学的にも異なる部分がたくさんあるし、一個人としてもそれぞれの価値観や事情があるわけで、違う思いを持っていたり、思ったようにいかないのは当たり前。
相手が自分の思ったように動いてくれないことに怒りを感じるよりも、思った通りにならないことが面白い! と発想を転換して、まずはこの状況をニュートラルな視点で見つめてみませんか?
イライラを沈めていくために
「夫が妊活に協力してくれない」と相手に対して不満が募っている時、一番何にイライラさせられているのか冷静に探ってみましょう。
Aさんの場合は、夫のこのような態度にイライラを感じていました。
「夫に問題が見つかっているのに改善しようとしない」
「タイミングを計りたいのにしてくれない」
「二人の問題なのに他人事」
よく自分の気持ちを探ってみると、Aさんはこのような夫の態度にイライラしているというよりも、傷ついていることに気付きました。
Aさんが今一番大切な問題だと思っている妊活に対して夫が消極的であることで、自分の気持ちを分かってくれない、と寂しさを感じていたのです。
その寂しさはさらに無意識に苦しい方向へと向かわせてしまいます。
「私は大切にされていないのかもしれない」
「私は愛されていないのかもしれない」
と自分に価値を感じられなくなるほどに傷ついてしまっていました。
夫は、ただ不妊治療に真剣になれないだけで、Aさんへの愛が少なくなったわけではないかもしれないのに、Aさんの中で勝手に飛躍した思いが走ってしまうと、問題がどんどんややこしくなってしまいます。
この自分劇場は暴走していくので、早めに見つけて、ストップしてあげた方がいいですよ。
「なんで彼の態度がこんなにむかつくの?」
そう問いかけながら、心の奥底の声に気付いていくことが大事です。
そもそも「妊活への協力」って変じゃない?
「夫が妊活に協力してくれない」
この表現がそもそも、ちょっと変だなぁと感じる時があります。
協力ということは、妊娠したいのは妻で、それに協力してあげるというのが夫という構図になってしまうからです。
妊活の主人公は妻で、夫は脇役。
当事者は妻で、夫はサポート役。
そんな立ち位置だったとしたら、夫はいつまでも「我が事」になりません。
奥さんが望んでいるから叶えてあげたいよね、と考えているに過ぎなくて、子どもが欲しいから妊活に取り組もうというスタンスにはなっていない男性が多いのではないかなと思います。
妊活や不妊治療は夫婦で取り組むべき問題なのに、実際にいろいろな努力をしているのは女性だけで、男性はお金を出しているだけ、といケースも散見されます。
妊娠はゴールではなくて、無事出産まで行けたら、その後には長い道のりの子育てが待っています。
このままいくと、延長線上も同じ関係性になってしまうかもしれません。
今度は「夫が子育てに協力してくれない」とぼやいていくようになるのです。
育メン、という言葉があるのは、子育てに参加する男性がまだ特別視されているから。
ふたりの子供なんだから、同じ当事者意識を持って、ともに力を出し合って子育てしていくもののはずですよね。
相手の本音を掴んでいこう
妊活ですれ違いを感じる時は、相手を理解していこうという姿勢が大事だと思います。
どうして妊活に消極的なのか。
気持ちを分かってくれないのか。
夫側の本音を知っていくということが、絡んだ糸を解きほぐす鍵になってくれます。
毎日一緒にいても、意外と相手が本当に思っていることは見えていないものです。
こちらがこうあるべきでしょ、と正論をかざしてしまうと、相手は本心を出せなくなりますし、知らないところで相手も傷ついている可能性もあります。
セラピーの現場では、潜在意識と繋がり、イメージの中で相手と対話をしていくことがあります。
潜在意識トークというのですが、普段の会話とはまた違ったやりとりが出来て、相手の本音を掴んでいくこともあります。
Aさんとは別の方ですが、同じように妊活にご主人が協力してくれないというお悩みがあり、潜在意識トークでご主人と対話を試みたところ、
「タイミングを取るのが辛い。俺だって疲れていたり、そういう気持ちになれない時だってある。
でも奥さんは日にちを指定してくるので、プレッシャーで家に帰りたくなくなる。俺は種馬じゃない!!」
と怒っていたのです。
タイミング法の指定日になると、夫のほうは全くやる気を失ってしまうという現象が起きていたのです。
これまで排卵日には残業やお付き合いで帰りが遅くなり、タイミングが取れない状況が続いていましたが、彼がここまでタイミング法を嫌っていたことに、妻の方は気付いていませんでした。
本来はお互いの愛情を交流させるためのセックスなのに、妊娠目的だけのものになってしまうと、女性よりも男性の方が気持ちが萎えてしまうようです。
妻が妊娠目指して一直線モードでいると、この繊細な反応に気付いてあげられず、すれ違いや不要な言い争いを引き起こす原因になってしまいます。
相手の内側に入り込むようにして、相手の本音を察してみると、思わぬ気付きがあることが多いです。
妊活は夫婦の絆を深める良いチャンスと捉えて
もともと今後の人生を共に歩もうと決心して選んだ相手のはずです。
妊活によって、知らなかった相手の価値観や考え方が見えてきたのなら、それはきっと良かったんです。
ぶつかりながらお互いを研磨しあって、輝きを作っていくプロセスだと思えば、ちゃんとぶつかった方がいい。
相手のことをもっと知って、自分のことも知ってもらって、ちゃんと思いや感情を分かち合うことができたら、二人の関係はもっと強固になるでしょう。
一方的に我慢したり非難したりということではなく、お互いを尊重しながら、コミュニケーションを深めて、ふたりの未来を語り合ってみてください。
こういうステージを乗り越えていくことで二人の関係はもっと信頼に満ちていきます。
おおらかな信頼で結ばれたパートナーシップを作っていくことこそ、私は重要な妊活なのではないかと考えています。
お迎えするベビーのためにも、良好なパートナーシップを目指してくださいね。
妊活でお悩みやストレスを抱えている方のために、「未妊セラピー」という心理療法を行っています。
セラピーが合っているか確認されたい場合、まずは思いを吐き出したいという場合は、初回カウンセリングがおすすめです。