ストーリーが生み出す悲劇トラップ

こんにちは、心理セラピストのあなゆきです。

今日は「ストーリーが生み出す悲劇トラップ」というテーマで、ストーリーの持つ力と弊害について考えていきます。

ストーリーが生み出す悲劇トラップ

そもそも、私達はストーリーが大好きです。

幼い頃に絵本を読み聞かせしてもらってきたせいでしょうか。
「昔むかし………」と言われると、思わず耳を傾けてしまうと思いません?

ドラマチックで感情移入できる内容であればあるほど引き込まれていきます。

この「ストーリー好き」な性質は、ビジネス、クリエイティブ、コミュニケーション等、さまざまな場面で作用しているはずです。

意識的、無意識的に関わらず、私達はまんまと「ストーリー」に影響を受けていることが多いのです。

良い影響だけでなく、気を付けなくてはいけない部分もある。

「ストーリーは毒にも薬にもなる」と私は思っています。

ストーリーが生み出す悲劇トラップとは何か、それについて書く前に、まずはどれだけ私達はストーリーというものに影響を受けているかを見ていきましょう。

ビジネスの世界で多用される「ストーリーテリング」

ビジネスの世界では、プレゼンやコミュニケーションに「ストーリーの力を使え」と言われますね。

市場では似たような商品が多くなっているので、どう差別化していくかということに悩んでいる人が多くなっています。

そんな課題には、ストーリーテリングの手法が使われます。

スペックだけでなく、商品の背景にあるストーリーを伝えていくわけですね。

開発秘話だったり、創った人の情熱だったり、描いている未来だったり。

そのストーリーに共感してくれた人は、商品を認知するし、ファンになってもらいやすいという考え方です。

私自身も、思わず購入しちゃった、という時には、だいたいストーリーテリングにやられています。

この間も、美容院で、シャンプーとトリートメント(6000円)を購入しました。

6000円のシャンプー&トリートメントセットは、私にとっては高級品です。

最初は買うつもりなど全くなかったのに、思わず買ってしまったのは、美容師さんから商品開発に至った想いや実現したい夢の話を聞いて共感し、応援したくなったからです。

もちろん商品の質も納得のいくもので実利性も感じているのですが、それだけではきっと購入までには至らなかったと思います。

まさにストーリーの力が私を行動させたんです。

ヒット作品に共通する法則「ヒーローズ・ジャーニー」

大ヒットした映画や本には、共通する法則が存在していることをご存知でしょうか?

マーケティングや創作活動をしている人にとっては、どこかのタイミングで学ぶことがあるかもしれません。

「ヒーローズ・ジャーニー/Hero’sJourney/英雄の旅」というもので、神話学者のジョゼフ・キャンベルさんという方が、見つけた共通法則なんです。

世界中の神話や有名な物語を研究していくうちに、ジョセフ・キャンベルさんは気付いたのです。

人々が魅かれる神話には、共通した普遍的なパターンがある!

ギリシャ神話も、スターウォーズも、マトリクスも、千と千尋の神隠しも、みんなこのパターンが当てはまります。

このストーリーの流れを、彼は「ヒーローズ・ジャーニー」と名付けました。

ヒーローズ・ジャーニーの流れ

  1. 日常世界
  2. 冒険へのいざない
  3. 冒険の拒否
  4. 賢者との出会い
  5. 戸口の通過
  6. 試練、仲間、敵
  7. 最も危険な場所への接近
  8. 最大の試練
  9. 報酬
  10. 帰路
  11. 復活
  12. 宝を持って帰還

タイトルだけ見ても全体イメージがつかめると思いますが、ざっくりご紹介するとこんな流れです。

<ざっくり解説>

ぱっとしない日常生活を送っていた主人公が、人生からコーリングを受けて冒険に出る。

変化の始まりを感じて、不安や恐れ、なんらかのハードルが待ち受けるが賢者と出会い、助言を受けたり、内的な勇気と智慧と繋がっていく。

新しい領域で試練に逢う。困難に立ち向かう中で、仲間との忠誠を誓う。

最大の恐怖が待ち受けるが、その恐怖を乗り越えることで新しい人生を得る。

宝を勝ち取り、故郷へ帰還する。

お気に入りの映画や小説と照らし合わせてみると、この流れに沿っていることが多いのではないかと思います。

へー、面白いなと思った方。
詳しくは、ぜひ本を読んでみてください。

 

 

この流れで創られた作品に、私達はハマりやすいということですよね。

ハマるというのは、感情を掴まれるという状態です。

ヒーローズ・ジャーニーで語られると、ワクワクしたり、共感したり、ドキドキしたり、悲しくなったりして、まさに感情が動くんですね。

私達はドラマチックな方に魅かれやすい

こうやって整理していくと、私達はドラマチックな方に魅かれやすい性質を持っているということが見えてきます。

2019年ベストセラー第一位になった「FACT FULUNESS」という本では、こう書かれています。

私達はドラマチックな物語を求める本能が組み込まれている。
けれども、ドラマチックな本能は抑えるべきだ。さもなくば、ドラマチックなものを求め過ぎるあまり、ありのままの世界を見ることはできない。何が正しいのかわからないままだ。

 

私達は、無意識に「ドラマチックすぎる世界の見方」をしてしまう傾向があり、
事実よりも、もっと深刻だったり、悲劇的な思い込みに繋がりやすいということです。

これは心理セラピーの観点からみても、共感します。

セラピーの場で思うこと

心理セラピーや心理カウンセリングのクライアントさんの話に耳を傾けていると、「ドラマチックすぎる世界の見方」を選んでいる、と感じる時があります。

先入観や固定観念などから、「こうに違いない」と思い込んでいることで、苦しみが生まれているのです。

たとえば、こんなお悩みです。

  • イベントに誘われなかったから、私はあの人から嫌われているに違いない
  • 上司は私を見下しているから、私のメールに返信をよこさないんだ
  • 別の女性と楽しそうに話している彼を見ていると、私よりも彼女の方が好きなのかなって思う
  • 子どもを産めない私は女性として失格な気がする

 

これらのコメントに共通していることがあります。

それはなんだと思いますか?

全部、推測なんです。

「~かもしれない」「~だったらどうしよう」「~のような気がする」

 

事実かどうか分からなくても、推測している時点で苦しいわけです。
自分の思い込みが苦しみになっています。

セラピスト的 整理の仕方

私がお相手のお話を聞くときに、心掛けているポイントがあります。

それは、「事実」と「想像」に切り分けていくことです。

「イベントに誘われなかったから、私はあの人から嫌われているに違いない」というエピソードだったとしたら、

事実は「イベントに誘われなかった」

想像は「私はあの人から嫌われているに違いない」

です。

苦しみのポイントを見ていくと、起きた事実というよりも、想像=捉え方によって感情が湧いてくるはずです。

想像=捉え方: 私はあの人から嫌われているに違いない。
→ 私は愛されていない存在、大切にされていない存在。

👇👇👇

湧き上がる感情: 悲しい、寂しい、孤独感、喪失感

 

苦しいのは、これらのネガティブな感情が湧いてくるからですよね。

誘われなかった本当の理由は、相手に確かめてみないと分かりません。

もしかしたら、相手はたまたま誘うのを忘れたのかもしれないし、何かしら気を遣って善意で呼ばなかったのかもしれません。

でも、勝手に決めつけて、勝手に脳内で悲劇をイメージして、勝手に苦しんでいる。

まさに自作自演のトラップにハマってしまう状態です。

 

こうやって整理していくと、「バカみたい」と思うかもしれませんが、私達は誰でも、こういうことを日常的に何回も経験していると思います。

頭の中でこしらえた悲劇よりも、現実はずっと優しかった、ということは結構多いものです。

この想像(=捉え方)も、ストーリーです。

ストーリーはすごくリアルで、パワーがあるから、私達は知らず知らずに乗っ取られてしまうのです。

何か心の中で苦しみが湧いている時、多くはストーリーによって生じていることを覚えていてください。

まとめ

  • ストーリーの力は絶大。私達を支配していくほどの影響力を持っています。
  • ストーリーは、人生を豊かにしてくれたり、意味を見出す手伝いをしてくれるという良い側面を持っています。
  • もともと私達はドラマチックな物語を求める本能が備わっているようです。
  • だから、ストーリーにどっぷりハマってしまうと、変なバイアスがかかって、真実が見えなくなってしまうことがあります。
  • 勝手に思い込んで、勝手に苦しむ、自作自演の悲劇トラップが発生する恐れがあります。気を付けましょう!
  • そういう時は、事実と想像をしっかり切り分けて、状況を整理しましょう。

 

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