三浦春馬さんがお亡くなりになって1ヵ月が経ちました。
私はこれまで、芸能記事や訃報などで扱われている話題の人物について記事を書くということは避けてきました。
憶測で何かを書くことはしたくないし、芸能人といっても一人の個人として考えた時に、家族や身近な人もいるわけで、ご本人や周囲の人の領域に、土足でずけずけと入りこむような態度はしたくないと思っているからです。
ですが、今回は、三浦春馬さんの死をテーマに書くことにしました。
勇気を絞りだして書こうと思ったのは、1ヵ月余経った今も、心を痛め、深い悲しみから抜け出せず、中には後追いも考えてしまっているファンの方がいらっしゃると知ったからです。
しかも、まさか自分がここまで落ち込むとは思わなかった、と自分自身の反応に戸惑っている人も少なくないようです。
今、心の中で起きていることを理解できるだけでも、少し楽になれるかもしれません。
死別の悲しみをどのように受け止め、折り合いをつけていったらいいのか、良かったら一緒に考えませんか?
春馬さんロスが止まらない
月命日だった18日は、Twitterにも関連のツイートがたくさんあがっていました。
あの土曜日から もう1ヶ月…春馬くんの月命日 スマホに三浦春馬て文字が出てて 動きも思考も停止した日。 なんでー!!て叫んだ日。 まだまだ信じられるはずもないし 信じたくない。
今日が春馬くんの 「月命日」なんて… 嘘って言って だってまだ30歳だよ? 1ヶ月経っても受け入れられないよ
中には、後追いしたい気持ちを必死に抑えているとか、彼がいない世界に生き残っていることに絶望を感じるというような、深刻なツイートもあります。
私のクライアントさんからも同様のご相談がありました。
毎日夕方になると無性に悲しくなり、涙が止まらなくなるんです。
気が付くとずっと彼のことを考えていて、家族からも心配されています。
仕事でミスをしないか不安なので、いつも以上に気を付けているんですが、この喪失感はいつまで続くんでしょうか。
人気絶頂で輝きまくっていた俳優の突然の死ですから、多くの人に影響を与えたはずです。
特にファンの方々にとってのショックは相当なものです。
今だに、現実を受け入れがたく、信じられないという気持ちでいらっしゃる方が多いのではないでしょうか。
有名人の死によってひどく落ち込んでいることを理解してもらえないこともあるかもしれません。
「身内でもないんだし、ましてや会ったことも話したこともない人なのに、どうしてそんなに悲しむんだ?」と。
確かに、家族や友人、同僚などに比べて社会的関係性は薄いわけですが、本来、死別の悲しみのスケールは、社会的関係性だけでは測れないはずです。
フロイト先生は「心理的距離の近い人であればあるほど、その人の死は激しい悲嘆をもたらす」とおっしゃっています。
肉親でなくても、たとえ一方向な形で心を寄せていたとしても、好意や愛情が強かった分だけ、死別の悲しみも大きくなって当然なのです。
だから周囲の人も「単なる一ファンなのにそんなに悲しむなんて変だよ」などと言わず、それだけ心の距離が近い人との喪失なんだと理解し、優しい気持ちで見守ってあげて欲しいと思います。
大切な存在を失った時の反応
死別など大切な人を失った時に、心身に起きる影響や変化のことをグリーフといい、日本語に訳すと「悲嘆」と表現されます。
春馬さんがお亡くなりになったことで、精神的ショックとともに、こんな状態が起こっていませんか?
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悲しみ、不安、怒りなどがふいに湧いてきて、自分で感情のコントロールができない。
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人の話を集中して聞けなかったり、ひとつのことを集中して取り組めない。
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人と会うのが億劫になって孤立しやすい。孤独感を感じる。
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時間の感覚がなくなり、生活のリズムがつかめなくなる。
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今まで難なく出来ていたことなのにとても難しく感じる。
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物忘れが激しくなったり、遅刻をしやすくなる。
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ずっと過去に思いを馳せ、後悔や未練を感じることが多くなる。
- 生きる意味が見いだせない、活力の欠如。
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疲労感、体力の低下によって活動量が減る。
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睡眠障害(眠れない、もしくは寝ても寝ても眠い)
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食欲への影響(食欲がない、味がしない、食べすぎる)
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免疫力の低下(感染症、扁桃炎、口内炎や帯状疱疹、突発性難聴などに繋がりやすい)
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動悸、息切れなどを感じやすい。呼吸が浅くなり息苦しさがある。
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体の痛み(胃や胸部、肩こりなど)。
もし、当てはまる症状があれば、グリーフと言われる状態に陥っている可能性があります。
グリーフは病気ではありませんが、喪失体験のダメージが強く出ているという証です。
「自分を労わる時だよ」のサインなので、当事者も周囲も甘くみないで欲しいのです。
グリーフの反応については、過去の記事でもかきましたのでご参照ください。
お別れの後の不調や鬱っぽさ。それはグリーフかもしれません。彼の死によって、何かを失っている
死別とは、その人を失うことだけではなくて、その人との繋がりで生じていた「何か」も一緒にもぎ取られてしまうことを意味します。
春馬さんの死によって、心の中にあった何かしらを喪失したのだと思います。
それは一人一人違うので、そこに思いを馳せてみると、「自分は何に一番苦しみを感じているのか」が分かるかもしれません。
スター的存在というのは、たとえばファンに対してこんなものを与えてくれていますね。
- この人を見ているだけで癒される、元気が出る。(活力)
- 私もこういう人になりたいと思わせてくれて、ゴールイメージをもらえる。(目標)
- その人の作品など表現によって、インスパイアされ、心が豊かになる。(豊かさ)
- 毎年、定例のイベントに行っているので思い出がたくさんある。(思い出)
などなど、私達の生活や歴史の一部になっていたり、生きがいを与えてくれています。
スター的存在の人が突然いなくなるということは、今まで、その人からいただいてきた活力や生きがいなども見失ってしまうことになります。
それは、「彼との未来」が奪われてしまったと言ってもいいと思います。
来年も再来年も、画面越しから彼の笑顔に会える、素晴らしいパフォーマンスを観られる、成長していく彼をファンとして応援できる、そう思っていたのに、その「彼との未来」がなくなってしまった。
受け取れるはずだった未来の幸せを失ったということなので、この喪失感は大きいものではないかと思います。
自分も傷ついている
春馬さんの自死の真相は分かりません。
でも、きっと彼が何かに傷つき、辛い思いをしていたのだろうと推測します。
特に、彼と自分を重ねあわせている部分が多いほど、彼が抱えていたと思われる痛みにシンクロしてしまうでしょう。
彼はどれほど辛かったのだろうか。
彼はどれほど傷ついていたのだろうか。
まるで、自分に与えられた苦しみのように受け取って、痛みを感じてしまうのです。
彼が非難されれば、自分が非難されているように傷つくし、彼が生きづらかった世界ならば、この世界は生きづらいところだと感じてしまう。
ファンの代表的な心理には、「共感」というものがあります。
なぜその人のファンになるかというと、何かしら共感できるものがあるからです。
- 何か自分と同じものを感じる
- 共感できる要素が多い
- 親近感を感じる
- その対象のようになりたい
そうだとしたら、ある意味、春馬さんの中に自分を見ていたことになります。
無意識レベルでは、彼がいなくなってしまったことで、自分も否定されたような、奪われたような気がしているのかもしれません。
彼のどんなところに共感していましたか?
彼の中に自分のどんなところを重ねていたのでしょう?
何もできなかったという無力感
「ファンとして、彼を救うことはできなかったのだろうか。
彼に何かをしてあげることはできなかったのだろうか」
そうやって悔いる気持ちを持っている人もいると思います。
現実的には一ファンとして出来ることはなかったかもしれない。それでも、何か彼のためにしてあげることががあったのではないかと思い悩むのです。
また、(自分なりのやり方でもちろん良いのですが)「愛する人をちゃんと見送る」という行為がないままだと、無力感は一層強くなると思います。
突然メディアから伝えられた情報に驚いて、ショックの渦の中に入り込み、実際にはまだ信じられず、「どうか嘘であってほしい」と否認したい気持ちのままでいませんか?
密葬の形でご葬儀は行われましたが、残念ながらファンの方は参加できませんでした。
彼への思いを綴れる「追悼サイト」を事務所は設けていますが、それ以外のお別れの場は用意されていないようです。
今後、お別れの会を予定しているとしていますが、新型コロナウイルスの影響もあり、まだ正式には詳細発表はありません。
このように、お別れをする場、思いを分かち合う場がないままに時間だけが過ぎていくと、現実を受け入れ、気持ちを整理する機会がないままなので、苦しみが深まる場合があります。
「愛する人をちゃんと見送ることが出来た」と実感できるだけでも、私達は少し心の重荷を置くことができます。
お別れの会を早くやれば良いということではなく、自分なりの方法で、彼に愛と感謝を贈り、お別れを伝えるということです。
無力感をはじめ、後悔や罪悪感がある場合は、より一層、大事なポイントになってくるでしょう。
この時期の過ごし方
気持ちが沈む、悲しみが止まらない、そんな状況が続いていらっしゃるとしたら、この危機的な時期をどのように過ごされていくのが安全でしょうか?
メディア情報、SNS情報は上手に選択する
報道やSNSでは、さまざまな情報に溢れています。
有名人であった場合は、一時的に報道やSNSでの書き込みが過密になります。
読んでいて癒されたり救われたりする内容もあると思いますが、一方で、憶測や中傷的な表現によって傷ついたりすることもあるでしょう。
知りたくなかったような内容に触れることもあるかもしれません。
そのような情報は、死別そのものの苦しみにさらに苦しみを上乗せしてくるような、毒のような存在です。
有名人の死別で苦しんでいる時には、情報の取捨選択がとても大事になってきます。
自分がセンシティブな状態にいると思ったら、一定期間、デジタルデトックスをして、そのような情報に触れないというのも手です。
自分を不快にさせるもの、傷つけてくるものから離れ、穏やかに過ごされることが良いと思います。
安心して気持ちを出せる場所を見つける
自分の中にある思いや感情を押しとどめ、表現できないままでいると苦しみが増大していきます。
悲しみ、不安、怒り……どんな感情も、浮かんでくるのは自然なので、ネガティブなものを消そうとか隠そうとすることはないのです。
安心して思いや感情を出せたり、分かち合える安全な場所を見つけて、自分の中にあるものを吐き出せる機会を持つと良いでしょう。
ご家族や友人がその役割を果たしてくれるかもしれないし、ファンや仲間だけが参加するようなクローズの場が救いになってくれるかもしれません。
思いを表現するワークをしてみる
「誰かに話す」ということが苦手、自分にはピンとこない、ということでしたら、思いを表現できるワークに取り組むと良いと思います。
春馬さん宛にお手紙を書いてみる
今の思いを絵や歌に込めて表現してみる。
ダンスなどの身体表現で感情を出してみる
など、自分の好きなやり方で、胸のうちにあるものを表現してみるのです。
自分なりのお別れの儀式をする
もし、まだ現実を認めきれていないし、ちゃんとお別れが言えてないなと思うなら、自分なりの儀式をしてみませんか?
キャンドルやお線香を彼のために焚いて、静かな心で彼のことを思い出してみましょう。
そして、彼に愛と感謝を伝えます。
彼がすべての苦しみから離れて、今は安らぎと愛の中にいると願います。
自分のしっくりくるやり方で良いですが、心の中で彼に純粋な愛を伝えていくという行為は、目に見えないエネルギーとなって彼の御霊に伝わるはずです。
「亡くなった存在に愛を伝えられた、感謝を贈れた」と実感が持てることは、心が元気になっていくうえで大事なことです。
身体面のケアも忘れない(水分摂取と休息)
悲しみでいっぱいの時、自分の身体のケアを忘れがちです。
グリーフの状態の時には、ストレス過多により免疫力が弱まっていくことが知られていますので、いつも以上に自分の身体を労わるようにしてくださいね。
- 水分を十分に摂ること
- 睡眠(まとまって眠れなくても、隙間時間で横になるなど、休息をこまめにとりましょう)
- 深呼吸(悲しみが深い時、呼吸も浅くなりがちです。たまに意識をして深呼吸をしましょう)
特にこの3点は意識をしてみてください。
変だな、と思ったら専門家へ相談しましょう。
この苦しみは自分一人では受け止めきれないな、死別によって自分が揺さぶられて辛いな、と思ったら、迷わず専門家に頼ってみましょう。
特に、自分も死にたい、という思いが出ている時には、プロの力を借りることをお勧めします。
無料で専門家に相談できる窓口はこの記事にまとめています。
不安や悩みがあってもどこに相談したらいいのか分からない
私は、亡くなった大切な存在と対話をしていく心理セラピーをご提供し、グリーフの問題を支援しています。
お力になれることがあれば嬉しいので、気になった方はお気軽にお問合せくださいね。
心の痛みが少しずつ溶けていかれることをお祈りしています。