新型コロナウイルス感染の拡大の終息が見えない中で、不安を感じている人がたくさんいます。
「自分や家族もかかってしまうのでは?」
「自分がウイルス感染しているかもしれないと思うと、誰にも会えない」
「仕事が一気になくなって、これからどうなるんだろう」
「いつまでこんな状況が続くんだろう」
「テレビやネットニュースでのネガティブな情報の洪水に溺れてしまって、ただただ怖い」
史上初めての緊急事態宣言も発出されたことで、自粛モードがさらに強まり、家の中でひとりぼっちで不安に押しつぶされそうになっている方もいらっしゃると思います。
今日は、そんな不安を消したい!と思っている人に向けてのメッセージです。
不安を感じている自分はダメだと思っていませんか?
今、世界中が未曾有の事態に陥っている中で、‘’心がついていかない’’、そう感じている人は多くいるはず。
でも、その心がついていかない感覚や不安感を上手に出せているでしょうか?
「みんながしんどいだから、文句言っちゃいけないよね」と不安な気持ちを抑え込んで、なんとか力づくで不安を消し込んでいこうとしている人もいるのではないでしょうか。
「不安な気持ちを出したら、周りも暗くなる」
「不安をさらけ出して弱いやつだと思われたくない」
「不安を感じたってなにもいいことないんだから、とにかく考えないようにしよう」
こんな風に考えて、不安を口に出せない状態のまま、「みんなで頑張るしかない!」と鼓舞するモードでいることは、私は健全ではないと思います。
心の表現まで自粛してしまうと、抑圧を強めてしまい、さらに不安が強まっていくんじゃないかと。
今、私もクライアントさんから「感じている不安をどうしたら消せるでしょうか」といったご相談を受けています。
不安をなくしたい、消し込みたいと解消法にフォーカスしている人がたくさんいますが、そもそも不安ってそんなに悪いやつなんでしょうか?
不安は排除しなくてはいけないものなのでしょうか?
不安は必要なものなんですよ
不安は私達の敵ではなくて、必要な機能を果たしてくれているんです。
不安のメカニズムを知ると、不安は生命体にとって大事な役割を果たしてくれているということが分かります。
不安は、脳内の扁桃体というところが湧き起こしていますが、
これは危険を察知するために働いてくれているんです。
扁桃体が活性化して、不安を感じるようになっています。
扁桃体は火災報知器のようなもの。
不安感は火災報知器が発するアラームみたいなもの。
危険を発見して、回避するための警報装置としての機能を果たしています。
火災報知器が働いてくれるから、危険が察知できるわけです。
あやうく火事になることを防げて良かった、すぐに逃げることが出来て助かった!という経験を持つ人にとっては、火災報知器のありがたみを身近に感じますよね。
そうでなくても、火災報知器が施設に設置されているということで安心感を感じられるはずです。
不安の気持ちが湧いてくるいうことは、自分の中にちゃんと危険を教えてくれる報知器(扁桃体)が設置されているということです。
こういう時期に不安な気持ちが募るというのは、生き物として正常なんですよ。
不安を生み出すメカニズムについてはこちらもご参照ください。
不安や恐怖はどこで作られる?
不安を感じられなくなったらどうなっちゃうのでしょう。
不安は敵じゃない。
そう分かったとしても、不安という感情が沸き起こっている状態はいやなもんだし、できるなら感じたくないですよね。
不安がなかったらどんなにいいだろう、って思いますが、本当に不安を感じることができない状態になるとどうなっちゃうと思いますか?
扁桃体は無意識のうちに素早く反応し、不安感や恐怖感という感情に乗せて、危険をお知らせしてくれます。
スピード重視なので誤報もありますが、ありがたい機能です。
もしなんらかの理由で扁桃体の機能を失ってしまったら、どんな自分になると思いますか?
たぶんね、恐ろしい出来事に遭遇しても、恐怖を感じることはありません。
高所恐怖症だったあなたも、バンジージャンプもなんの抵抗もなく飛び降りれる!
突然、得体のしれない地球外生物と鉢合わせしても、なんの恐怖感もなくハグハグしちゃうかもしれない。
(誰?)
恐怖を感じなくなって無敵になるかもしれないけど、それだけ危険な目にあうことも多くなるはずですね。
危険かもしれないという感覚がなければ、警戒心も湧かないので、なんでも口に入れたり、なんでも触ったりしてしまいます。
目の前の危険に素早く気が付けないと、命に関ることになります。
これが扁桃体の果たしている役割です。
扁桃体は蛇にも鳥にも同じようにあります。
扁桃体の機能が退化せずに多くの種に備わっているということから、危険を察知することで生まれる「不安」は、生存するために極めて重要だということを意味します。
ある実験では、不安を感じやすい人ほど、危険を正確に素早く発見できることが分かっているそうです。
(雑誌「ネイチャー」より Peason RM et al.,2009)
本当に危険が身に迫っているか身に迫っているかどうかをちゃんと判断するために、情報処理システムが磨かれていくのです。
不安を感じやすいということは長所でもあるのです。
どんな時に不安は出てくるか
こんな時、人は不安を感じやすいはずです。
切羽詰まった時
物事が差し迫ってどうしようもなくなるとか、環境などに追いつめられ、どうしようもないという状態。
反対に言えば、ゆとりや余裕がない状態です。
不確実性が高い時
バッドシナリオが起きるかもしれないし、止められるかもしれないけれど、その確率は不透明。
無力感が強い時
何かあったら対応できないんじゃないか、自分には力がない、と思っている時。
正体が分からない時
恐れがなんなのかはっきりしない。情報や知識がない状態で立ち向かわなければいけない時。
新型コロナウイルス感染の問題で言えば、この4つがすべて当てはまると思うのです。
自粛モードに追い詰められ精神的に余裕がなくなってきたよ(切羽詰まっている)
これから感染爆発して大変なことになるかもしれないし、意外にこのまま収束するかもしれない。(不確実性)
もし感染してしまったら自分は耐えられるのか。(無力感)
そもそもウイルスってやつは見えないから厄介だ(正体不明)
だから、繰り返しますけど、今の状況は、不安を感じて当たり前なんです。
不安と付き合いながら生きていくしかない
そもそも、平常時から、不安を生み出す要因っていくらでもありますね。
病気だったらどうしよう。
愛する人と別れることになったらどうしよう。
失業したらどうしよう。
株で損したらどうしよう。
考えたらきりがない。
リスクに目を向けたら、際限なく浮かんでくるはず。
不安をなくそう、感じないようにしようとするよりも、人生に不安が取り巻くのは当たり前のことなんだと捉えて、どうやってうまく付き合っていくかを考えた方が現実的ですよね。
不安は妄想
不安という感情は、危機かもしれないぞ!という未来予想のもとに起きるので、そういう点からいえば妄想なんですよね。
起きていないことに対して案じている状態です。
脳の中が、ネガティブな妄想で忙しくなっているんです。
扁桃体の反応は人それぞれです。
ささいなな刺激であっても敏感に反応する火災報知器もあれば「おいおい、ちゃんと働いてくれよ」と言いたくなるほどの鈍感な火災報知器もあるかもしれない(?)
扁桃体が暴走しだせば、理性的な判断が利かなくなってくるので、不安は雪だるまのように大きくなっていきます。
そうなると、事実が見極める能力が弱まっていって、ネガティブな妄想がどんどん広がってしまいます。
悪い方、悪い方に想像を膨らませて、不安を感じている自分に気付いたら、まずは今に意識を戻していきます。
未来軸に意識が行っている時に不安が起きるので、「はいー、今に戻りましょうー!」と自分に教えてあげて、目の前のことに集中してみてください。
今に集中していると、不安は軽減していきます。
深呼吸しながら、身体の状態を観察したり、
キャベツひと玉、千切りに取り組んだり、
超絶な爪磨きにいそしんでもいいし。
なんでもいいんじゃないでしょうか。
自分なりの「今ここの行動瞑想」を見つけてみてください。
ちなみに私は、踊っている時とか、アイロンがけで徹底的に皺を取っている時なんかは、めっちゃ「今ここ」ですね。
今ここに集中している時には、不安や心配は同時に存在できないのです。
ぜひ、意識してみてくださいね。
まとめ
- 不安を感じるのは悪い事じゃありません。
- 不安の感情は、火災報知器のアラームみたいなものです。危険かもよ、と教えてくれています。
- だから、不安は命を守るために大事な役割を果たしてくれているんです。
- 不安を感じやすい時は、切羽詰まっている時、不確実性が高まっている時、無力感が強い時、正体不明のものに向きあっている時です。今の状況のような事態では、不安を感じるのは正常な反応です。
- 不安の要因はいくらでも出てくるので、不安をなくそうとするのではなくて、どう付き合うかを意識した方が得策です。
- 不安という感情から生み出される妄想に振り回されないようにしましょう。まずは、事実をちゃんと見極めていきましょう。
- 意識を今ここに置いていると、不安は軽減していきます。目の前のことに集中しましょう。自分なりの行動瞑想を見つけるといいですよ。