生まれなかった命とどう向き合う?心のケアの大切さ。

今日は、流産や死産の経験があって、次の妊娠を待っている方に向けてお届けします。

流産や死産という、辛い経験をなさったあなた。

ちゃんと心と身体を労わってあげましたか?
感じた心の痛みは、きちんと消化できていますか?

流産や死産は、「特別な死別」だと私は考えています。

自覚以上にダメージを抱えたままでいることも多いので、幸せなママになるためにも、しっかり心と身体のケアをしてくださいね。

流産・死産経験の心のケアの大切さを知ってほしい

妊婦の15%は流産を経験すると言われていますので、決して少ない数字ではありません。

多くの女性が人生の中で、おなかの赤ちゃんを失うという喪失を味わっていることになります。

私はこれまでに、未妊セラピーを通じて、流産や死産により赤ちゃんをお迎えできなかった方と接する機会が多くありました。

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流産や死産経験した人からよく聞く言葉。

もう一度妊娠できるだろうか」
妊娠できてもまた悲しい結果になってしまうのではないだろうか」

次の妊娠に対して不安が高まり、恐怖を抱えながら妊活をしている方がたくさんいらっしゃるんですよね。

このように不安や心配でいっぱいになっていると、せっかく自分に備わっている妊娠・出産スイッチが入りにくくなり、せっかくの「妊娠する力」をブロックしてしまう可能性もあります。

次の妊娠のためにも、カップルの未来のためにも、この悲しい経験をどう消化し、受け入れていくのか、それがとても大切になってきます。

でも、皆さんのお話を伺っていると、悲しみを封じ込めて忘れようとしていたり、何事もなかったかのように日常生活にすぐに戻っていかれたり………。

ポジティブシンキングで乗り切っていこうとしているんですね。

そうではなくて、まずは傷ついた心を自覚して、自分のことをたっぷり労わって、優しくケアしてあげてほしいなぁって思うんです。

喪失のダメージ度を測ってみよう。

流産・死産のもたらす影響度というのは、個々に違います。

次の3つの掛け合わせでダメージのかかり方が変わってくると思います。

・思いの大きさ(どれだけ妊娠を希望していたか)
・状況(妊娠の週数や妊婦の年齢、パートナーとの関係、医療従事者によるケアの有無等)
・思想(死生観や胎児に対する考え方等)

たとえば、このようなケース。

‘’赤ちゃんが生まれてくるのを心待ちにしていたのに、安定期に入ってからのまさかの流産。
機械的に処置をされたような気がして、痛かったし、苦しかった。
赤ちゃんがいなくなってしまった寂しかったけれど、誰もそばにいてくれなかった。
ひとりぼっちでこの局面に耐えた。
流産の責任は自分にあるに違いない、と自責の念に駆られている‘‘

3つの影響が重なってくると、流産が与えるショックは非常に大きいものになるでしょう。

状況はおひとりおひとり違うものなので、ケアの必要性も一概には言えませんが、簡単なチェックリストをご用意したので、気になる方は確認してみてください。

流産後、このようなことがありませんでしたか?

喪失のダメージ度チェックリスト

  • 突然、強い悲しみが湧いてきて涙が止まらなくなる。
  • 元気な時と落ち込む時の落差が激しく、情緒不安定になっている。
  • 気持ちがふさぎ込む日が多くて元気が出ない。疲れやすい。
  • 食欲がない。眠れない。
  • 原因不明の不調が続く。
  • 無気力でやる気が起きない。
  • 次の妊娠が怖くなってしまった。赤ちゃんは欲しいけど、妊活に前向きになれない。
  • 夫婦関係がなんとなくギクシャクしてきた。
  • 友人に会いたくない。
  • 自分に自信が持てなくなった。
  • 周囲の人と比較して落ち込みやすくなった。

ひとつでも思い当たることがあれば、流産をきっかけとして、グリーフと呼ばれる状態に陥っている可能性があるかもしれません。

グリーフとは、喪失をきっかけとして心身の不調やストレスがかかっている状態のことです。

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お別れの後の不調や鬱っぽさ。それはグリーフかもしれません。

流産や死産によるグリーフはじわじわと浸食するように進んでいく。
そのように私は感じています。

知らず知らずに、じわじわと心と身体にダメージが及んでいくのです。

流産後に「不調が続くな、不安定な感じだな」と思っていても、どうしたらよいのか分からないままに時ばかりが過ぎていくことが多いのです。

生まれなかった命と向き合い、心のケアをしていく大切さが軽視されているかもしれません。

流産・死産は、どうして「特別な死別」なのでしょう?

私がそう考える理由をあげてみます。

現実を受け止めることが難しい

おなかに宿った命と会うことができないままお別れを迎えることもあるかもしれません。

ご遺体をきちんと確認できないままだと、どこか半信半疑のままで、現実を受け止めることに時間がかかりやすいと言われています。

また通常の死別では、葬儀や法要をあげて、弔いの時間を持つことが一般的ですが、流産・死産の場合は、葬儀や法要をあげるケースも多くありません。

現実を受け止め、ゆっくりと消化し、気持ちの整理をしていくというような向き合いの機会が与えられにくいのです。

私達は、儀式をすることで、悲しみを受け止めたり、サポートば受けられる機会を作ってきたのです。

流産や死産に対する儀式が重んじられていないことも、グリーフを強めてしまう原因のひとつではないでしょうか。

母体にかかるストレスの大きさ

妊娠が分かった時の喜び。

これからの未来を想像してのワクワク。

そんなポジティブな気持ちからのお別れだからこそ、ダメージも大きくなります。

天国から地獄へ突き落とされるような感情のアップダウンは、心身に大きな影響を与えるでしょう。

さらに、妊娠中の身体の変化、手術での侵襲も大きなストレスになります。

身体もまだ十分に回復していなかったり、悲しみにも浸る時間も持てないまま、手術の後すぐに忙しい日常生活に戻っている人がとても多いと感じます。

流産・死産後の女性の身体はホルモンバランスも崩れていますので、心身ともに不安定です。

この不安定な中で、赤ちゃんとお別れをしていくのですから、ダメージは大きくなって当然です。

すぐに通常運転に戻らなければならなかった。

流産や死産も立派な死別であるにもかかわらず、多くの人は喪の時間をきちんと取らずに、日常生活にすぐに戻られることが多いと思います。

妊娠したことを公表していなかった段階で流産された場合は、周囲にその事実を伝えることがないままかもしれません。

そうなると、周りの人はそんな悲しいことがあったことを知りません。

誰にも知られていないから変な気を遣われずに済むから気楽だ、と思われるかもしれませんが、一方で周囲から支えてもらえる機会を失っているということでもあります。

相手はまったく悪気のなく発している言葉に傷つけられることもあるかもしれません。

職場の誰にも言えないまま、いつも通りを装って仕事をこなしていると心身に負担がかかりやすくなります。

パートナーとの差を感じやすい

流産、死産を経験した時にパートナーと悲しみを十分にわかちあえなかった、温度差を感じたという声はよく聴きます。

ただ、一緒に悲しみを共有したかったのに、「誰にでも起こることだから……」「悲しんだって仕方がないから前を向こう」などと励まされて、気持ちがついていかなかった。

夫はすぐに立ち直って、ケロッとしている様子を見ていると孤独感を感じた。

男女の意識の差はどうしてもあると思います。

女性は、つわりを始めとする身体の変化を感じて、いわば体でまるごと妊娠を味わっていました。

流産、死産の時の心身が受け止めるストレスも相当なものです。

一方、男性はその体感がないままのお別れですから、その痛みを「想像する」しかないのです。

また、脳の性質も男女で差があるともいわれていますね。

話を聞いてくれて、共感してほしいと思うのが「女性脳」
それに対して、アドバイスして解決してあげたいと思うのが「男性脳」

お互いの対処方法が違ったとしても、ある意味当然なのかもしれません。


パートナーも悲しくてショックだったとしても、男性脳が発揮されていたら、共感を飛び越して、解決のための行動に先回りしやすいのです。

一緒に落ち込んでいてはいけないと冷静に振る舞うことでこの局面を乗り越えようとしているとしたら、それも愛情表現ですね。

温度差を感じてさらに苦しいと思われている時は、そもそも「違って当然なんだ」と立ち返っていけると良いかもしれません。

苦難に耐える時にパートナーシップは強くなっていくはずです。

まとめ

今回は、どうして流産・死産を経験した後に、心と身体のケアが必要なのか、ということについてお伝えしました。

グリーフは、思いや感情を閉じ込めていることで起こります。

ちゃんと悲しむ。
ちゃんと泣く。

そうやってしっかり思いや感情を出していくことはとても大事なことです。

でも、周りに迷惑をかけたくない、弱気になりたくないという一心で、しんどい気持ちをぐっと飲みこみ、ポジティブシンキングで頑張っていると、後からグリーフの反応が現れてくることがあります。

自分の中に「流産の痛みがまだ残っているなぁ」と気づいたら、優しくケアしてあげてくださいね。

具体的なセルフケア方法については、次の記事でご紹介します。

次の妊娠のために、残念だった過去の経験と上手に付き合っていきましょう。

幸せな妊娠が待っていることを信じていてくださいね。

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